4月に社会人デビューした方も、そうでない方も、ビジネスでは世代を超えたコミュニケーションがとても重要であることは理解できるでしょう。
コミュニケーションを取りながら、相互補完しつつ、ゴールに向かって進んでいくというプロセスはどの企業活動でも同じです。基点となる他者/他社とのコミュニケーション能力が低いと、総じてその後のゴールまでのプロセスの精度が下がってしまいます。また最悪の場合にはゴールまで辿りつかず頓挫してしまうこともあります。
今回は、そうならないためにも、基本の「ホウレンソウ」を徹底活用することをお薦めします。
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うまくいかないコミュニケーション
コミュニケーションの手法はいくつもありますが、そもそもコミュニケーション量が少ないと仕事がスムースに進まないこともあります。とはいえ、何でもかんでもすぐに話ができるわけでもありません。まずは信頼関係がなくてはならないからです。
ホウレンソウの前に、まず必要なのは「信頼関係の構築」です。コミュニケーションがうまくいかないのは、信頼関係がないからです。
そもそもお互いに「違う人間」だということが前提にあることを理解する
では、信頼関係はどうすれば構築できるのでしょうか?
相手を信頼するために必要なステップの第一歩は「自己開示」です。相手に信じてほしければ自分をオープンにすることが大切です。「自分はこんな人間です」ということを伝え、相手にも心を開いてもらう必要があります。
相手からすれば、「いったいどんな人なのか?」という風に思っているわけですから、まずはその不安を取り払わなければなりません。
これはつまり、本質的には「自分と相手は違う人間だ」という前提を理解しているかどうかです。
相手と違うからこそ、自己開示をし、信頼関係を構築していき、コミュニケーションをスムースにさせなくてはなりません。
違う人間同士が協力するには絶対に「共通言語」が大切
自分とは違う相手と手を取ってビジネスを進めるために必要になるのが「共通言語」です。共通言語とはそのビジネスで使用している専門用語かもしれませんし、社内用語かもしれません。業界用語の場合もあるでしょう。
これらをきちんとピックアップしてまとめて、共有することが最初のステップとなります。「身内ネタ」は共通言語ではないですし、そこに登場する言葉も伝わりませんから、ビジネスで使用しても一切通じません。これらはちょっと考えれば分かることなのですが、意外と無意識に使ってしまうこともあるのではないでしょうか。
また、社内の一部で使っているような略語などもついつい使ってしまいがちですが、「どうして分からないのか?」と嘆く前に、「もしかしたらこれは共通言語でない、特有の言葉を使っているのではないか?」と自問してみましょう。
共通言語は、共通の意味を定義付ける
共通言語をピックアップしたら、その意味を定義づけます。
実は同じ言葉を使っていても微妙にその意味が違っているということは往々にして起きていることです。相手は「○○という意味のつもりで話していた」と後から分かったという経験はないでしょうか。
例えば、納期に絡む言葉で「~まで」といった表現をします。実際のビジネスの現場では、以下のようなことが起きています。
「納期は4月30日までに提出」
と言う言葉の意味は、
「4月30日中に提出する」
という解釈をするケースが多いと思いますが、稀に4月30日を含まずに、
「4月29日中に提出する」
という解釈をする人もいます。
「まで」は、その日(この場合は 4月30日)を含むかどうかという解釈の違いです。
このように、せっかく同じ言葉を使っているのに意味が違えば、コミュニケーションのボタンの掛け違いは解決しません。むしろ少しずつ意味が違うので大きな事故につながってしまう可能性が高いでしょう。
「私はその言葉をこういう意味で理解していますが、どういう意味で使っていますか?」とすり合わせておくことが重要になります。
※ちなみに先ほどの例の「まで」は、一般的には「当日を含む」解釈が正解です。
高い質のコミュニケーションをお互いに取るというのは、「共通言語」を使って対話すること
共通言語をピックアップし、意味の定義づけを終えれば、あとはそれらを使ってコミュニケーションをとっていくことになります。そこで大切なのは定性情報と定量情報をバランスよく伝えることです。
ホウレンソウは、その頻度も大切ですが、定性情報と定量情報がなければビジネスでは成り立たないということを知っておきましょう。
例えば、「頑張って売り上げます!」という報告があったとしても何の意味もありません。「誰に、どうやって、いくら売るのか?その具体的な目標金額はいくらなのか?今どれくらい達成しているのか?」を伝えなければ報告にはならないからです。ただ「頑張ります」を100回報告したとしても相手はそれを聞いて納得はしません。定量情報を含めて、一度にきちんと報告するほうがベターなのは明白です。
つまり「徹底的なホウレンソウ」というのは、量を増やすということでなく、相手にとって過不足なく情報を伝えることが大切だという意味です。
この定性情報と定量情報をバランスよく入れるには、「フォーマットを作る」ことでカバーすることができます。もちろん SFA ツールでも問題ありません。ただ、ツールを増やし過ぎて3つも4つも導入するとどこに何があるのか分からなくなってしまいますし、作業効率が下がります。できるだけシンプルで簡単にアクセスできる SFA を選択するようにしましょう。
どんなツールでもフォーマットでもいいのですが、毎日簡単に報告するには、基本的なところでは以下の情報があればよいでしょう。
例えば、部下からの営業活動の日報だとしたら、以下のような項目になります。
項目 | 詳細 |
---|---|
企業名 | xxxx 株式会社 |
案件名/プロジェクト名 | xxxxx プロジェクト |
行動 | 訪問件数、見積金額、コール件数など |
目標売上 | xxxxx 円 |
今日の売上 | xxxxx 円(進捗率 xx %) |
気づいたこと、感じたことなど | 実は異なる二―ズがあった、今度の担当者はxx からの異動なのでxx あたりを注意したほうがよさそうだ等 |
定性情報から定量情報に転換することもあるので、どんな風に感じたのかなどは重要な情報となります。
一方、部下からの報告を受けた上司は、ただその報告を見ていればいいということではありません。むしろ上司からどんどんコミュニケーションを取らなくてはなりません。せっかく現場で感じたことを部下があげてきたなら、長年の経験から分かるアドバイスや対策などをしっかりフィードバックしなければなりません。
上司からのフィードバックの例としては、「xx 社の担当者さんは、以前に xx という商品に興味を示していた。今回は予算次第では、xx の提案をしてもいいと思うし、必要なら同行して提案説明もする」といった内容でしょう。
数字を達成するために行なうアドバイスはもちろんですが、定性情報に対し、経験を駆使してアドバイスができるのが上司の強みです。部下にとっては「目標の達成までの道のりが見えるようになる」わけですから、適切なフィードバックをすることが重要です。ここにもホウレンソウが活きてきます。
一方、社内での信頼関係を構築するケースでもホウレンソウは大切です。
部下に信じてもうためには、まずは「自己開示」をします。そして信頼関係の基盤を固めていきます。普段から相手の興味がある共通の話題などでコミュニケーションを円滑にしておきます。冗談のひとつも言い合えるような関係性が理想的です。なぜなら、コミュニケーションにおいて「笑い」というのは大変重要な要素だからです。
普段からしっかりと関係性ができていれば、仕事の本題に入るときもスムースですし、同じ温度感で話をすることができます。
例えば、打ち合わせでは「そのテーマや目的を伝える」「相手に何を期待しているのか(役割分担)を決める」「いつまでに行うのか(期限)を決める」というのはしっかり伝えます。
コミュニケーションはお互いの意思のキャッチボールです。フォーマットに則った精度の高い言語のやり取りは、チーム力向上には欠かせません。
まとめ:「ホウレンソウ」を徹底的に活用する
このように、チームが活性化するときというのは、このホウレンソウが適切な量と質で回っているときです。チームプレーでプロジェクトを推進したり、大きな案件を受注するためにチームが一丸となっていくというプロセスでは適切な量と質のコミュニケーションが欠かせません。
繰り返しになりますが、がむしゃらに報告すればいいわけでもありませんし、何でもかんでも相談すればいいということでもありません。また口を出し過ぎてしまったり、細かすぎるところまで言う必要もありません。
それらの適切な量と質を担保するために、システムを活用する、ルールを決める、定義を決めるなどが重要になってきます。
強いチームを作り、共に戦っていくためにも徹底的に「ホウレンソウ」を回すだけでも大きな効果が得られるのではないでしょうか。
トライベクトル株式会社 代表取締役。会社経営 19年目。翻訳・ローカライズ業界24年。翻訳・ローカライズ実績年間10,000件以上。
現在は BtoB (特に IT 企業)専門のマーケティングサポート(動画や導入事例などのコンテンツ制作全般)と言語サービス(翻訳、オンライン通訳、英会話、e-learning 講座等)を行っています。