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例え話ができる人、できない人

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世の中には話の分かりやすい人、分かりにくい人がいる。その違いは何だろうか。理由や原因は沢山考えられるが「相手に伝えたい、分かってほしい」と思うなら間違いなく「話の分かりやすい人」を目指すべきだろう。その一つのスキルとして「例え話が上手な人」にはなっておきたい。

ビジネスコミュニケーションでは、例え話ができると強いし、相手の理解度も深いのでビジネスパーソンにとっては便利なツールになるだろう。

では、例え話ができるようになるにはどうすればいいのだろうか。

例え話ができる人、できない人

まず、世の中には「例え話が上手な人」と「そうでない人」がいる。

仮にどちらも同じテーマと目的を話しているとしたら、明らかに前者の方が理解されやすい。例え話ができる人は、どうして例え話をするのだろうか。

例え話をする目的は「理解してもらい、行動を促す」ため

例え話は(相手にとって)話を分かりやすくために行う。なぜなら話を分かりやすくすれば、相手が行動しやすくなりため、望む成果も出やすくなるからだ。

つまり、例え話をする目的は「相手に理解してもらい、行動を促すため」だと言える。

そんなことは当たり前かもしれないが、では、なぜ「例え話」は相手の理解が深まるのだろうか?

例え話のポイント

その問いに答える前に実は「例え話」には2種類存在することをご存知だろうか。例を挙げて考えてみよう。

1. 一般的な話で伝える「例え話」

一般的な話で伝えたい場合には、広く知られているであろうものを使って話をする。例を挙げる。

  • テーマ「翻訳業界について」

翻訳業界は MLV(マルチランゲージベンダー)と呼ばれる大手(グローバル)企業が世界中に複数存在し、そこから言語ごとに仕事が振り分けられ、各国の MLV が管理する支社や中小の翻訳会社に仕事が流れてくる。

※翻訳業界関係者ならこれだけで伝わるが、そもそも翻訳会社や翻訳業界を知らない人には伝わりにくい。

  • 一般的な「例え話」

翻訳業界は、ゼネコン業界と構造が似ている。元請け会社があり、その下に下請け会社、さらに孫請け会社というように仕事が細分化され流れていく。翻訳の仕事はゼネコンの仕事と同様に上から下に降りてくる。

このように、「業界の構造」を説明したいときには他業界(より一般的に知られている業界)を例にして説明することで相手の理解度を高めることができる。

2. 相手の経験・知見に即した話で伝える「例え話」

実はこちらの方が伝わる効果が高い。相手がこれまで経験してきたことや知見などを使って例え話をする方法だ。

  • テーマ「営業部マネージャの仕事の定義」

営業部のマネージャに求められるものは、イチスタッフとしての行動ではない。マネージャは自分自身の成果だけでなく部下の成果を最大化する必要がある。またスタッフの中には「自分さえ売り上げを作れればいい」という考えを持つ者もいるだろう。そういった人をどう管理、評価するのか、また活躍が少ないスタッフをどのように教育するのかなども重要な仕事である。つまり営業部のマネージャは営業部全体をあらゆる角度から捉えて時には鼓舞し、管理運用することである。

  • 相手の経験に寄り添った例え話

あなたは学生時代にサッカーをやっていたと言っていた。営業部は、いうなればサッカーチームのようなもの。マネージャーはフィールドの中にいるキャプテンだ。キャプテンは、フィールド外にいる監督からの作成遂行のために自分と周りのチームメイトを機能的に動かすことを求められるだろう。そうでなければ試合に勝つことはできないからだ。ただ、チームにはフォワードもいればゴールキーパーもいる。それぞれが勝利を目指してひとつのチームにならなければ勝てない。各メンバーの特徴をしっかり理解して、具体的な作戦を指示し、遂行させること、また自身でもゴールを決められるだけの決定力も求められる。これらがキャプテンとしての役割であり営業部も全く同じだ。

このように、サッカーチームに置き換えて説明することで(相手がサッカー経験があれば)、相手の経験に即した例え話になるので相手の理解度は急速に高まる。その相手は自分の営業部をサッカーチームとして見始めることができる。

なぜ例え話ができるのか(構造化)

いかがだろうか。同じテーマでも、明らかに後者の方が理解してもらいやすいのではないだろうか。

※上記は例え話がなくても理解できるレベルのテーマではある。

どうしてこのように例え話ができるかと言えば、それは「伝えたいテーマの構造を理解している」からだ。

例えば、一つ目の「翻訳業界は上から下に仕事が流れている」というテーマは要するに「仕事が上から下に細分化して流れている」ということだ。これは翻訳業界だけでなく、ゼネコン業界でも同じだ。

翻訳業界よりもゼネコン業界の方が広く一般的に知られている可能性が高く、「仕事が上から下に細分化して流れている」ということを伝えたいのであれば、ゼネコン業界を例にしたほうが分かりやすいだろう。

つまり物事の構造や仕組みさえ理解してしまえば、どんなものでも例えることができるという話だ。物事の構造や仕組みというのは、別の言い方をすれば「本質」のことである。

結局「本質」を掴めれば自己理解を深めてくれるし、「本質」が分かっていれば難解なテーマも簡単に表現することができる。大事なのは本質の理解なのだ。

例え話の弊害

ちなみに、例え話は内容を簡素化してしまう要素もあるため、専門家同士のコミュニケーションには向かない。複雑な話を複雑なまま受け止める必要があるからだ。必要な情報が欠落してしまうことを避けるために、同じ知識レベルでは例え話をせずに真正面からコミュニケーションをとる方が良い。

絶対に存在する「専門知識リテラシーの差」

例え話を活用するシーンというのは「あるテーマについて自分の専門知識リテラシーと相手のリテラシーに差がある場合」ということだ。

実際のビジネスシーンではこれがほとんどだろう。

例えば、企業には様々な部署がありそれぞれの機能を持っている。営業部が顧客との契約について答えることができなくとも、法務部は契約関係の専門であるからこそ正しい回答ができる。

一方で法務部は販売能力はないが、営業部は販売のプロだ。

お互いに持っている機能が違うからこそ、そこに「専門知識リテラシーの差」ができあがるわけであり、だからこそそれぞれのプロにお願いするわけだ。

こんなシーンはビジネスの現場では頻繁に起こっている。何らかの業務をパートナー企業にアウトソーシングするのも「自分たちではできない業務をお願いしている」ということだ。(だからパートナーシップが大切なのは言うまでもない)

繰り返すが、専門家同士なら例え話がなくても構わない。知識レベルが同じならそのまま話せばいい。しかし「リテラシーの差」があることがほとんどなのだから、そこにビジネスチャンスが生まれるし、「例え話」の必要性が生まれる。

このように、相手がお客様であっても、社内の他部署の人であっても、また上司や先輩であったとしてもそこに「リテラシーの差」があるなら「例え話」は有効な手段として使えるということが言える。

ビジネスコミュニケーションは「相手に理解してもらい行動をしてもらう」ことがゴールなのだから、それを最短最速で達成するために知識を増やすことが重要だと言える。